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お恵渡つれづれ

いよいよ七月に突入、ということはつまり一年の半分が終了ということです。は、早い…。早くも真夏日が続いておりますが、皆様、いかがお過ごしでしょうか。

さて、先月28日にガッシュ文庫さんより発売されました『桜吹雪は月に舞う』。お手に取って下さった方はまず、その分厚さに驚かれたことと思います。文庫で300ページを超えるのは、私も人生初の経験でした。私の(どうでもいい)経験上、文庫はだいたい250ページを超えたあたりから安定して自立し始めます。いつかどこかの書店さんで、自立(物理的に)本フェアなどを開催されることがありましたら、ぜひぜひ拙著もご紹介して頂きたいところです。

陽ノ本・お恵渡も三冊目ということで、シリーズ拡大の記念も兼ねて、後書きには書ききれなかったお恵渡や武家社会の決まりごとなどについて、ちょこちょこっと書かせて頂こうかなと思います。私が文献等から得た知識に私見を交えたものですので、厳密に言えば史実とは食い違う点も出てくるかと思いますが、その辺はご容赦下さいませ。
では、興味を持って下さいました方は、追記からどうぞ。
今回のテーマは『名前(その1)』です。

武士の名前ははっきり言ってとてもややこしいものです。世界史でも、同じ名前の君主が何人も登場してきて混乱しますが、あれは元々名前のレパートリーが少ないのと、聖人などの名前から取ることが多かったのでまあ仕方が無い部分もあります。でももうちょっと何とかできなかったのかとは思いますけど。

武士の名前のややこしさは、ずばり、一人の武士が複数の名乗りを持つこと、それに尽きると思います。
例外もあるので一概には言えませんが、基本的に武士は最低でも『幼名』『通称(通り名)』『諱(いみな)』の三つを持ちます。
更に、出世して官位を得るとその官位も一緒に名乗ります。

まず幼名とは、文字通り幼い頃に名乗る名前です。『桜吹雪は月に舞う』のキャラですと、本文中には登場しませんでしたが、主人公の好文は幼い頃は『道之進(みちのしん)』という幼名でした。史実だと家康公の『竹千代』が有名ですね。子どもの死亡率が高い時代でしたので、縁起の良い字を使うのは勿論、魔に魅入られないようわざと悪い意味の字を使ったりしたりもしたようです。

無事に育って元服すると、通称と諱を名乗ることになります。しかしこの諱、『忌み名』とも書くように、可能な限り隠して使わないものでした。名付けられた本人も諱で名乗るのは一生に数える程度(もしくは皆無)、親しい友人ですら知らないものだったようです。
どれくらい隠すのかというと、うちは七代くらい前まで旗本だったのですが、先日、家系図を見直したところ、諱がわかるご先祖様は全体の一割程度でした…せめて子孫には隠さないで欲しかった…。

それでは困るので用いたのが通称です。好文の場合は『錦四郎』ですね。よほど畏まった場合でもない限りは、基本的にこちらを使いました。武士の名前で三文字以上だと、だいたい諱ではなく通称だと判断していいんじゃないかなと思います。この通称には、百官名(官職風の名前。『大膳』とか『外記』とか『主水』とか)や、『東百官』(武士が官職名を勝手にアレンジして作った官職風の名前。格好良さ重視なので『隼人助』『伊織』『左内』など、心の中の中学二年生が騒ぎだしそうなものが多い印象です)なども多く用いられます。

親密度にもよりますが、だいたいは通称で呼べば失礼には当たりません。しかし例外が一つあります。それは相手が官位を有している場合です。

……と、ややこしさがだいぶ増してきましたので、一旦ここで切り上げようかと思います。よろしければまた次回、ご覧下さいませ。
ここまでお付き合い下さり、ありがとうございました。